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経営用語の基礎知識
経営用語の基礎知識(第3版)

クロス・ライセンス Cross License

特許等を互いに供与して、競争に打ち勝つ高度な企業戦略。近年、既存競合企業への効果が薄れてきているが、新規参入を抑制する効果が期待できる。

 公正取引委員会では、クロス・ライセンスを「特許等の複数の権利者又は所有者がそれぞれの保有する権利について、相互にライセンスすること」と定義しています。一般には、特許権を互いにライセンス(実施権の許諾)することを指します。

ライセンスの“爆弾”効果
 他社の特許を利用するためには、ライセンス料を負いますが、クロス・ライセンスを利用すれば、債務を負わずに他社技術を利用できます。
 異業種間であれば、供給相手が自社の特許を利用しても自社の事業範囲に悪影響を与える可能性が低いので、クロス・ライセンスは成立しやすくなります。同じ特許に対して同業他社がライセンス料を支払っているなら、自社はクロス・ライセンスによってコストを抑制でき、価格競争で優位になります。
 一方、同業他社とのクロス・ライセンスは、メリット・デメリットが複雑に絡み合うため、戦略的な思考が求められます。戦略の例として、既参入企業同士が新規参入を抑制するためにこれを利用することもあります。新規参入企業は、ライセンスという“爆弾”による報復を恐れて参入時期が遅くなりがちです。また、お互いに他社のライセンスという“爆弾”を抱えているので、企業間競争において均衡を保つ効果があります。なお、交渉に多大な時間とコストを要するため、近年は特定の商品に対して包括的なクロス・ライセンスを結ぶこともあります。
 また、ある1社が市場を独占している場合、競合他社がその独占企業とクロス・ライセンスを結ぶことができれば、競合他社に参入の可能性が広がるため、独占市場に風穴を開けることもできるようになります。
 ただし公正取引委員会では、クロス・ライセンスによって極端に競争が制限された場合には、独占禁止法上違法になることもあるとしています。

ベンチャー企業にはなじまない
 近年ではモノづくりが階層化するようになり、クロス・ライセンスが成立しなくなってきています。特に、機能を特化したベンチャー企業は、与える特許はあっても、必要な特許がないことが多く、業態としてクロス・ライセンスになじまないという特性があります。(中川宏之)


(書籍発行:2008年4月)
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