NEWS RELEASE
資産価格上昇の恩恵を受けてきた韓国の富裕層
〜 韓国と日本の富裕層を比較分析 〜

2008年10月6日
株式会社野村総合研究所

 株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、会長兼社長:藤沼彰久、以下「NRI」)は、韓国の富裕層(金融資産5億ウォン(約4,300万円)以上保有する60歳以下の企業経営者・プロフェッショナル)の資産形成と金融資産の管理・運用の方法について、2008年2月から4月にかけて調査を実施しました。2007年に日本においてNRIが実施した同様の調査と比較した結果、韓国と日本の富裕層(金融資産1億円以上保有する59歳以下の企業経営者・プロフェッショナル)を取り巻く環境において共通点が多くみられることがわかりました。
ここでの企業経営者とは、上場企業経営者、非上場企業経営者を指す。
ここでのプロフェッショナルとは、医療法人の経営者、開業医、勤務医、公認会計士、税理士、弁護士を指す。

【株価や地価の上昇により韓国では富裕層が増加】
 韓国でも日本でも富裕層を代表すると言われる職業は、企業経営者とプロフェッショナルです。この2つの職業について、どのように資産を形成したかを分析したところ、韓国の富裕層の資産形成の方法は、有価証券や不動産の価格上昇によるところが大きく、一方、日本の富裕層は、自分や配偶者の所得や退職金を貯蓄して資産を形成する人が多いという特徴がありました(図1)。また、日本のプロフェッショナルは、所得の蓄積のみに資産形成を委ねる割合が高いのに対し、韓国のプロフェッショナルは、所得の蓄積に加えて、相続・贈与や資産運用を組み合わせて資産を増やしています。
 韓国は、1997年のIMFショック(1997年7月よりタイを中心に始まった、アジア各国の急激な通貨下落(減価)現象で、韓国に対してIMFの支援と指導が入ることになった)以降2007年まで、株価や地価が一貫して上昇を続けたことで富裕層が増加しました。それに対して、日本は2003年から2007年半ばまで株価は上昇しましたが、地価の上昇は三大都市圏に限られるなど、資産価格の上昇はまだら模様です。

【金融資産ポートフォリオにおける預貯金の比率は、韓国も日本も約3分の1】
 富裕層(企業経営者)の金融資産ポートフォリオにおける預貯金の比率は、韓国も日本も約3分の1でした(図2)。
 この結果は、個人金融資産に占める現預金の比率(韓国47.6%(2006年、韓国銀行「統計システム」より)、日本50.2%(2007年9月末、日本銀行「資金循環統計」より))と比べ低く、韓国と日本の富裕層が、株式・債券・投信などのリスク性資産を多く保有するという傾向を示しています。

【取引金融機関は、韓国も日本も国内系銀行が圧倒的】
 韓国と日本の富裕層が取引をする金融機関を比較すると、両国とも国内系銀行(日本はメガバンク、地銀・第二地銀)が圧倒的に多いことがわかります(図3)。国内系銀行に次いで、韓国の富裕層は外資系銀行との取引が日本より多く、日本は大手証券との取引が多くなっています。
 企業経営者よりもプロフェッショナルにおいて、国内系銀行(日本の場合はメガバンク、地銀・第二地銀)との取引の集中度が高いことは、韓国・日本の共通点です。

【経済の成熟化や人口高齢化に対応したサービス強化が今後の鍵に】
 韓国と日本は、戦後の右肩上がりの経済成長によって富を蓄積してきたこと、銀行を中心とした規制の強い金融制度が続いたこと、銀行・証券などの業態間の規制緩和が進み始めたこと、少子高齢化のスピードが速いことなど、富裕層を取り巻く環境において共通点が多くみられます。
 これまでは、韓国の富裕層は不動産などの資産価格の上昇に乗って容易に資産を増やすことができましたが、今後、韓国の経済や社会が成熟化していくと、韓国の富裕層は厳しい運用環境における資産管理・運用に直面すると考えられます。その際には、欧米型のプライベートバンキングをそのまま輸入するのではなく、遺言信託や事業承継サポートなど、韓国の経済成熟化や人口高齢化に対応したサービスを強化していく必要があります。
 NRIでは、今後も、韓国と日本の富裕層マーケットの動向を分析し、金融機関のプライベートバンキングビジネスのあり方を示唆していきます。


【ニュースリリースに関するお問い合わせ先】
株式会社野村総合研究所 広報部 松野、瀬戸 TEL: 03-6270-8100 E-mail:


【ご参考】


調査概要
 
「NRI富裕層・超富裕層アンケート調査2008(韓国)、NRI富裕層・超富裕層アンケート調査2007(日本)」
実施時期: 韓国 2008年2月〜4月、日本 2007年1月〜3月
方法: 韓国は、フォーカスリサーチ社の既存調査のモニター(PB担当リスト、高級ビラ購入意向者リスト(不動産含み20億ウォン以上資産保有者))から抜粋・紹介を受け、1対1の個別面接(回答者の意向によってFAXや郵送による調査も併行)
日本は、高額納税者名簿に2003年〜2005年の中でいずれかの年に1回以上掲載した人のうち納税額1,500万円以上の20,000名に対する郵送による調査
対象: 韓国は、世帯の金融資産5億ウォン以上(ソウル市内)で60歳以下
日本は、世帯の金融資産1億円以上(全国)で59歳以下
韓国、日本ともに一般的にプライベートバンキングの対象となる金融資産規模を持つ層を対象とした。年齢区分については、韓国は数え年齢、日本は満年齢のため、表記は異なるが同じ年齢層になっている
回答者: 韓国は、企業経営者(60歳以下)49名、プロフェッショナル(60歳以下)99名
日本は、企業経営者(59歳以下)49名、プロフェッショナル(59歳以下)32名
調査担当:
野村総合研究所 金融戦略コンサルティング部 宮本 弘之
  ソウル支店 柳 赫(RYU, Hyuk)

図1: 韓国と日本の富裕層の資産形成の経路
  韓国と日本の富裕層の資産形成の経路
 
「あてはまる」「ややあてはまる」「あてはまらない」の3つの選択肢のうち、「あてはまる」と答えた回答者数のみを集計(複数回答)

図2: 韓国と日本の富裕層(企業経営者)の金融資産ポートフォリオ
  韓国と日本の富裕層(企業経営者)の金融資産ポートフォリオ

図3: 韓国と日本の富裕層が取引をする金融機関
  韓国と日本の富裕層が取引をする金融機関
 
メイン金融機関は、自身が管理・運用する(個人の)金融資産について、最も多く利用している金融機関。サブ金融機関は、同2番目に多く利用している金融機関


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